弁護士田中宏幸のコラム
2013年11月29日 金曜日
寄与分
Q 私は父が経営していた鉄工所を、高校卒業後長年手伝ってきました。
そのため、自分名義の不動産や預金は持たず、家のために働いてきました。
このたび、父が亡くなりましたが、弟たちは父の遺産である工場を売って平等に分けるように主張しています。
この場合、私の働きは父の相続において評価してもらえるのでしょうか。
A 相続人の内に、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献(寄与)をした人がいる場合には、その人は遺産分割にあたって、法定相続分によって取得する額以上の遺産を取得することができます。
あなたの場合、お父さんの財産の維持又は増加に特別の貢献をしたものと認められるかどうかが問題となります。
あなたの寄与分が認められれば、遺産の分割にあたって、評価されます。
ただ、具体的に多く取得できる額(寄与分)がどれくらいになるかは、相続人間の協議で決めるのが原則です。
しかし、協議が調わなかったり、協議ができないときは、家庭裁判所に申立てをしてその額(寄与分)を定めてもらうことになります。
2013年11月25日 月曜日
特別受益者
Q 父が亡くなりましたが、母が先に死亡していましたので、兄と私の2人が相続することになりました。
兄は父の生前、商売の資本金を出してもらい、今の価格に換算すると1,000万円になります。
相続時の父の遺産は4,000万円です。
公平な分配方法はどうしたらよいでしょうか。
A この場合のお兄さんのように、お父さんから生前の贈与を受けた者や遺贈を受けた者を「特別受益者」といいます。
このようなときは、遺産4,000万円に生前の贈与の1,000万円を加えた計5,000万円を遺産と考えて(みなし相続財産)、相続分を算出します。
そうすると、あなたとお兄さんの相続分はいずれも(4,000万+1,000万)×1/2=2,500万円と一応なります。
お兄さんの相続分は、この額からすでに贈与を受けている1,000万円を控除した1,500万円となります。
あなたの相続分は2,500万円です。
ただし、生前贈与であっても、被相続人が特別受益としない意思表示(持ち戻し免除の意思表示)のもとに贈与している場合は、例外的に上のような扱いはしません。
これは被相続人の意思を尊重するためです。
2013年11月22日 金曜日
先妻と後妻の相続権
Q ① 夫が亡くなりましたが、私は後妻で、先妻の子が2人います。
亡夫の遺産について相続権があるのは誰ですか。
なお、遺言はありません。
先妻は現在も健在です。
② 私の友人で私と同じような立場の後妻がいるのですが、入籍していなかったようです。
その場合はどうなりますか。
A ① 相続人はあなた(後妻)と先妻の子供2人です。
(先妻には相続権はありません。)
他に相続人がいないとすれば、法定相続分は、あなたが1/2、先妻の子が各々1/4となります。
② あなたの友人は内縁の配偶者と言いますが、その人には亡夫の相続権がないものとされています。
従って、先妻の子2人が相続人となり、各々1/2の法定相続分があります。
但し、内縁の配偶者を保護しようとする法律や判例もありますので、詳しくは法律の専門家に相談されることをお勧めします。
2013年11月18日 月曜日
遺産分割協議・調停・審判
Q 遺産分割は法定相続分どおりに分ける必要がありますか。
A 遺産分割とは、残された遺産を相続人の誰にどの遺産を分けるかを決める手続といえます。
遺産の分割は、法定相続分にとらわれずに、相続人全員の協議(合意)によって、自由に決めることが出来ます。
全員が合意すれば相続人の1人にすべてを取得させてもかまいません。
分割が決まりますと、遺産分割協議書を作成して、書面でその内容を明らかにしておくと、後日の紛争を防ぐことができます。
もし、遺産分割の協議で合意できないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停申立を行うことができます。
調停でも遺産分割の合意に至らないときは、家庭裁判所が審判を行うことにより、遺産を分割します。
2013年11月15日 金曜日
死亡退職金は遺産か
Q 夫が亡くなり、死亡退職金が支給されましたが、これは遺産として分けなければならないのでしょうか。
A 死亡退職金が「遺産」となりますと、それらは共同相続財産となり、相続人全員の遺産分割の対象となります。
また「遺産」とならずに、特定の人(例えば妻など)に支給されるのであれば、それらを除いた財産が遺産分割の対象となります。
したがって、これらが遺産となるかどうかは非常に重要な点です。
死亡退職金については、その法的性質ともからんで、遺産となるか否かについては一律に決められません。
死亡退職金に関する支給規定の有無などにより個別的に遺産か否かを検討することになります。
いずれにしても、難しい面がありますので、法律の専門家に相談するなどして事後のトラブルとならないように注意してください。