弁護士田中宏幸のコラム
2014年05月02日 金曜日
特別受益
Q:遺産分割において特別受益ということを聞いたことがありますが、それは何のことですか。
A:共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合に、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。この場合、利益を受けた相続人は、いわば遺産の前渡しを受けたものとして、遺産分割においては、その特別受益分を相続財産に持ち戻して(これを「特別の持戻し」といいます。)、各相続人の具体的な相続分を算定することがあります。
この特別受益は、法定相続分を修正するもので、共同相続人間の実質的平等を図ることを目的としています。このため、共同相続人が同程度の利益を受けている場合には、このような扱いをしないことが多いです。
ここで注意することは、贈与の場合、持ち戻しの対象となるのは、相続人に対する贈与のみです。相続人の親族(配偶者や子)に対して贈与があったことによって、その相続人が間接的に利益を得たとしても、原則として特別受益には該当しないのです。
大阪・難波の遺産・相続の法律事務所
田中宏幸法律事務所
弁護士 田中宏幸
2014年04月28日 月曜日
鑑定費用の負担書
Q 家庭裁判所において不動産の価格を鑑定によって決める場合の鑑定費用は誰が負担することになるのですか?
A 法定相続分に基づいて各当事者が負担するのが原則です。
調停手続では、当事者全員が合意した負担方法に基づいて処理することができます。
審判手続では、費用負担者を決める必要がある場合は、家庭裁判所が鑑定費用額を定めた上で、遺産分割の審判とともに鑑定費用負担の裁判をすることになります。
2014年04月25日 金曜日
不動産の評価方法
Q 不動産の価格は遺産分割の調停・審判手続ではどのようにして決めるのですか?
A 基本的には、当事者の合意で決められた金額に基づいて処理されることが多いです。
不動産の価格を決める方法として、固定資産税評価額、相続税評価額(土地は路線価となります。)、土地の公示価額及び不動産業者による査定額などがあります。
不動産の価格について合意ができない場合は、不動産鑑定士による鑑定をすることになります。
2014年04月21日 月曜日
遺産が隠されているとき
Q 相続人3人の中の1人が被相続人と長年同居していることをいいことに、遺産の一部を隠していると思われるのですが、家庭裁判所に遺産分割の調停申立てをすれば隠されている遺産を探し出してくれるのでしょうか。
A 残念ながら、家庭裁判所の遺産分割調停手続は、遺産を探し出すことを目的とした手続ではありません。
それ故、家庭裁判所が遺産が他にもあるかどうかを探し出すということはありません。
もちろん、調停のときなど、相続人に対して、その遺産の範囲や内容について意見を聴き、必要な資料の提出を促すことはありますが、他にも遺産があると考える場合には、原則として、自らその証拠となる資料を提出する必要があります。
このような場合は弁護士に相談されることをお勧めします。
2014年04月18日 金曜日
相続債務の負担割合
Q 被相続人の債務の負担者などについても、家庭裁判所の調停で話し合うことができるのですか?
A 被相続人の債務(借金等)は、法律上相続開始(死亡)によって法定相続分に応じて当然に分割されますので、原則として、遺産分割の対象にはならないと考えられています。
したがって、調停において、当事者間で特定の相続人が債務を相続する旨の合意が成立したとしても、それはあくまで相続人間の内部関係を決めたものにすぎず、その内容を債権者(金融機関等)に主張できるわけではありませんので注意して下さい。
実務的には事前に債権者(金融機関等)との間で交渉して債務者の負担について詰めていくことが多いです。